
「マダム」と「マドモワゼル」について、仏語のクラスで習ったことは忘れた方がいい。というのは、仏政府が、行政文書では「マダム」の呼称のみ使うことを決めたからだ。
「マダム」と「マドモワゼル」
これまで、フランスでは、既婚であれば「マダム」、未婚であれば「マドモワゼル」と女性の呼称が使い分けられていた。英語の「Ms.」のような中間的な呼称は無かったのである。男性については、未婚であろうが既婚であろうが「ムッシュー」しかなかったので、何の問題もなかった。
ところが、現代のフランスでは、多くの若者が法律的な結婚をしないため、児童の半分は婚外子である。この状況を背景に、フェミニストの団体がずっと「マドモワゼル」の廃止を訴えていたのだが、やっとその要求が認められることになった。ただし、大統領選挙のキャンペーンシーズンのため、選挙対策だという声も上がっている。
この団体は、企業にも同じ取り決めを求めている。現状では、オンラインで食品をオーダーする時でさえ、女性の場合は、「マダム」か「マドモワゼル」か、明らかにしなければならないのだ。
ところで、ある年齢に達した日本女性が、趣味の仏語のクラスで「マドモワゼル」と呼ばれても喜んではいけないようである。それは若く見えるのではなく、「結婚していない」ように見えるからなのだ。全部「○○さん」で済む日本語は、案外平等な言語なのかもしれない。
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