
中国やインドの成長が著しいと言っても、世界の富裕層は米国に偏っているようである。世界銀行のエコノミスト、ブランコ・ミラノビッチ氏の調査から明らかになった。
もっとも富裕な1%
「もっとも富裕な1%」の分布を見てみると、その半分が米国人で2,900万人である。次に多いのがドイツ人で400万人。その後にフランス人、イギリス人、カナダ人、韓国人、日本人、ブラジル人と続く。中国やインドの「もっとも富裕な1%」は、ほとんど統計にも載らないくらい少ないようだ。
「もっとも富裕な1%」の定義は、税引き後の年収が1人あたり34,000ドル(約262万円)以上であることだ。4人家族だと34,000×4=136,000ドル(約1,047万円)となる。円高なので、日本の富裕層が多くなっているようだが、円安に振れればたちまちその数は減ってしまう。ちなみに、世界の平均年収は、1,225ドル(約94,000円)に過ぎない。新興国の中産階級は、欧米の標準に照らすと、富裕層からかけ離れている。それどころか、生活保護者並みだ。
ミラノビッチ氏によれば、欧米や日本の経済状況がどんなに悪くなっていると言っても、富裕層は、西側諸国にしか存在しない。また、米国の最貧層5%の収入は、インドの富裕層5%と同じぐらいだという。ミラノビッチ氏に言わせれば、「もっとも富裕な1%」への抗議でウォールストリートを占拠している場合ではない。もっと世界の格差に目を向けろということになるのだ。
ともすると、国内の問題ばかりを見がちな我々だが、今一度、世界全体を思い出してみるべきなのかもしれない。
世界銀行東京事務所