バーチャルと3次元の距離を縮める開発
独立行政法人・産業技術総合研究所の中村則雄主任研究員らは2010年8月25日、人間の錯覚を利用して高感度な触力覚(感触と手ごたえ)を連続的に生み出すことのできる指先ほどの小型触力覚インターフェースの開発を発表。
さらに3Dテレビと組み合わせることで、立体映像に触力覚を与え、感触で確認しながら形状デザインを行うことができるシステム
「i3Space(アイ・キューブ・スペース)」を開発した。
近年、3Dモニターは映画やパソコンなど、一般にも多く出回りつつある。iPhoneをはじめとしたタッチスクリーンやゲーム機における体をコントローラーにみたてたシステムなど、バーチャルな世界と3次元の距離が徐々に縮まりつつある。しかし触覚や力覚を感知するものはまだ一般的でなく、従来のロボットアーム型インターフェースではユーザーの動作を邪魔することがあり、実用的ではなかった。
立体映像で直感的に造形できる
今回開発されたi3Spaceでは、実体がなく触ることのできない立体映像に“
触れたような錯覚”を起こすことができる。平面のタッチスクリーンに触れて操作するのと違い、立体映像は文字通り形があり、実際に触れることはできない。
これを指先に装着した位置測定用マーカーで指先の位置を測定し、指先と立体映像との距離を計算。錯触力覚インターフェースから出力することで触れたように錯覚させるのである。
また、6方向から同時に複数の指の動きを測定することで、立体映像との接触、立体映像をつまんだクリップ動作、クリップした後の拡大・縮小動作を手のひらに邪魔されることなく検出できる。これにより、複数の指先の動作で
立体映像の移動・変形・回転操作を3次元で直感的に行うことが可能となった。たとえばろくろを用いた陶芸のように、立体映像を回転させ手の感触をたよりにツボの立体造形を行うこともできる。
これが一般にも実用化されれば、オンラインの仮想空間で実際にものに触れながらショッピングやゲーム、旅行を体験することも可能になるだろう。3D映画に視覚だけでなく触覚や力覚、果ては嗅覚や味覚にまでそなわる日も遠い未来のお話ではなくなるだろう。
産総研:触れる立体テレビを実現するシステムを開発